おむすびひとつ

Aがね、この寒いのに実家でバーベキューすると言うのですよ。単に実家で食いたし、母親の料理じゃなく肉、特にテールとかホルモンとかの、妙な部位をメインに、サイドメニュー少なめに、そしてついでに皆のアイドルZを連れていって遊ばせる(Zが、遊ばれる)、近況報告をして家買うとか仕事や私の妊娠段階の進捗の報告などを一気にやっつけてしまおうという？まぁなんというかある意味合理的で楽チンな行事を企画してくれるわけですよ。

うーん、そういう企画に予定日までジャスト一ヶ月の嫁がウハウハついてくと思ってんのかしら？

ノルマみたいなもんですから？行きますよ。食いますよ。話に加わりますよ。意見を述べないように、意思表示だけ。めんどくせー！

誰だっけ？妊婦にストレスない生活送るようにって言ったの？

ノルマですから。

これは立場上ある程度は仕方ないので、一番楽な方法で一気に片がつくのでウハウハではないにせよ行きますよ。で、Zに出されたメニューが。
姑は、どーしても自分の作ったものを孫に食わせたいらしい。それが尽くす優しさの表現と思っているから。お気持ちだけで十分です。何故なら、貴女は糖尿高血圧だから。甘いものが好きで、塩辛いものが好き。一歳八ヶ月の幼児は出汁味だけでも十分、と、…パンパース論争。

ところでZにはおばあちゃんが実質三人います。
私の母。
Aの母。
Aの叔母。Zにとって大叔母。行かず後家ですが、機転の利くとても好感度の高い人。嫌いじゃありません。

そしてここにAの母が作ったお握りがあります。おむすび、ではありません。でかい手で握った市販品よりやや小さめの、『お握り』。柔らかめに炊いた米が半殺しになりかかっています。海苔で巻いたうるち米の牡丹餅に近いかも。まぁ、こういうものだと思って食べたらそれはそれな食べ物です。八個握る面倒をなんなくクリアする辺り、面倒をいとわない働き者な姑です。それをね、Zに是非食べさせて？と言うのです。
あー、多分塩つけて握ったよねー。
ここは塩消費量maxの新潟県。
具は鱈子と、梅干し(姑自作)。
ここは塩消費量…。
『じゃぁ、(^ー^)ノ鱈子にしよっか』
梅干しをなぜ避けたか、多分伝わってないとは思うけど。
海苔で巻いたご飯が好きなZが両手で掴んでモリモリ食べる姿は大人をすっかりたぶらかします。姑も自分の作ったものを孫が喜んで食べる姿にご満悦。が、Zの真隣に座ってなんやかやと世話を焼いていてくれた第三の婆ちゃんが。
『鱈子でかいねぇ！しょっぱすぎるよ！』
うん、同感です。
『鱈子取ろうか！』
えぇえ？本当にほじってとりそうな勢いに取り敢えず待ったをかけ、Zが好きなように食べさせながら、莢ごと焼いた塩気のないそらまめや、珍しく薄味のプチヴェールとにんじんをちらつかせてお握りから興味を逸らします。どうせ力一杯半殺しになるまで握ったお握り、鱈子が出てくる辺りでZはギブアップ。さっと私の皿へ、私の胃へ。案の定ご飯には塩が利いて、鱈子は焼いてあり塩分が濃縮。新潟の人って働き者なのでよく汗をかくため、塩気の強いものが必要なのは分かるんですけどぉ。保存食作らないと冬のりきれなかった過去も分かるんですけどぉ。

現代ですから！

暖房、車、流通の三拍子揃った現代において、その塩の量はどう考えても病気になる。否、なってる。
そういうわけで、二個目のお握りも同じ選択同じ末路でほぼ私の胃に納まり、何とか事なきを得たのでした。

塩分と三人目の婆ちゃんがいる話でした。
厄介ダ。

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